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2025/10-2025/12

2025-12-26

Speaker:
長谷川洋

Affiliation:
太陽系科学研究系

Neural network reconstruction of space plasma structures from in-situ measurements

Revealing what kind of plasma phenomena or structures are observed from in-situ measurements has been difficult, especially for regions where the magnetic field is turbulent or highly inhomogeneous. We have been developing data analysis methods for visualizing multi-dimensional space plasma and magnetic field structures from spacecraft data by use of some governing equations, including Grad-Shafranov and MHD equations. We first present a brief history of this reconstruction attempt over three decades in which the governing equations were explicitly solved by setting spatial initial conditions using in-situ measurements. We then introduce a new approach for the reconstruction using physics-informed neural networks (PINNs) that combine physics laws and deep learning, a framework that works for noisy data, contrary to traditional methods. We test this PINN-based reconstruction method on synthetic data and on real events in Earth’s magnetosphere, in which magnetic reconnection was observed. Future prospects are also discussed of this PINN-based approach for understanding and predicting complex space environments using spacecraft and simulation data.

2025-12-12

Speaker:
式守隆人

Affiliation:
篠原研M2

あらせ衛星を用いた高周波EMICの統計解析と励起メカニズムの検討

HFEMIC波は、高周波で狭帯域(Δf ≲ 0.1 fcp、f < fcp)で発生する電磁イオンサイクロトロン(EMIC)波の一種である。先行の事例研究および統計研究(Teng et al., 2019; Asamura et al., 2021; Min & Ma, 2024)により、HFEMIC波は温度異方性(T⊥ > T∥)をもつ低エネルギー(≲100 eV)プロトンによって駆動される可能性が高いことが示唆されている。Teng et al. (2019) では RBSP データを用いた HFEMIC 波の統計解析が行われたものの、粒子の温度異方性に基づく励起過程の詳細な議論は行われておらず、そのメカニズムには未解明な点が残されていた。また、EMIC 波の準線形理論を HFEMIC 波に適用すると、励起には高い温度異方性が必要と予測される一方で、実際にはシミュレーション(Min, 2025)や衛星観測ではより低い温度異方性でも励起されていることが報告されており、励起機構の理解には依然として課題が残る。
本研究では、Arase 衛星データを用いて HFEMIC 波イベントを新たに抽出し、改めて統計的解析を行うとともに、その励起プロセスについて詳細な検討を行った。本発表では、従来研究では明確に確認されていなかった夕方~夜側領域において HFEMIC 波の存在が明らかとなった点と、その解釈について議論する。さらに励起プロセスに関して、Asamura et al. (2021) で提唱された励起モデル、モード変換、高調波 EMIC による励起といった複数の分類に基づいてイベントを整理し、その特性を先行研究と比較しながら詳細に議論する。

2025-12-05

Speaker:
藤原晨司

Affiliation:
清水研M2

太陽風による質量損失とその太陽面構造への依存性

太陽風は、地球磁気圏との相互作用を通じて宇宙天気現象を引き起こすだけでなく、質量損失を通じて太陽自身の長期的な進化にも寄与している。現在の太陽は、太陽風によって 10^{-14} M_sun/yr 程度の割合で質量を失っていると見積もられているが、その特性は緯度や領域によって大きく異なる。この違いは、太陽風が磁場構造などの影響を受けることに起因すると考えられているものの、その詳細な関係は解明されておらず、理論モデルと観測結果との整合なども不十分である。
本研究では、複数の太陽活動サイクルにわたるUlysses衛星の太陽風のその場観測データを用い、太陽風による質量流束が太陽面構造にどのように依存するかを解析した。質量流束が大きく変動する事例は様々な緯度によって観測され、極大期に特に頻度が増えるが、全体のケース数としては少なく、全球での質量損失率も安定した値を取る傾向にあることが示唆された。また、観測された太陽風の多くはコロナホールを起源としているが、その内部でも領域ごとに質量流束が大きく変動することがあった。これはコロナホール内の微細な磁場構造の影響を反映している可能性がある。さらに、同一の領域から速度や密度の異なる太陽風が放出されている例も確認され、同じ構造を持つ領域でも太陽風が多様な振る舞いを示すことがわかった。

2025-11-28

Speaker:
関宗一郎

Affiliation:
東京大学 笠原研M2

C,N,Oイオンを分離・定量可能な小型質量分析装置の設計

惑星や小天体の大気組成を知ることは、その天体の環境や進化・形成過程を理解するうえで重要である。例えば、地球の電離圏からは窒素や酸素が流出していることが知られているが,組成比やその太陽活動度依存性を調べることは地球,ひいては他の惑星の大気進化を理解する手掛かりになる.しかしながら、従来用いられてきた古典的なTime-of-flight (TOF)型の質量分析器では、質量分解能が10以下でありNとOの分離が困難であった。装置形状を大きくしてTOFを長くとりNとOを分解できる高分解能を持たせた観測器もあるが,リソースの問題があった.そこで本研究では、CubeSatクラスの探査機に搭載できるサイズを維持しつつ,NとOを分離可能な小型イオン質量分析器を設計している。
NとOを分離するために、本研究ではOの負イオンに着目した。入射イオンが質量分析器入り口の炭素薄膜を通過する際に、ほとんどのO+は電荷交換により中性粒子または負イオンになることが知られている。一方、Nは電荷交換で生成される負イオンの比率がOに比べて非常に小さい。したがって、負イオンと中性粒子を分離して計測できれば,TOFで分離せずともNとOの比が求められると考えた。
このアイディアに基づき、数値計算で具体的な装置形状を検討した。この際、動径方向に電位勾配ができるようにしたことで、高さ30㎜のTOFユニットでOとO-の検出位置を分離させることができた。電位は、それぞれ入り口が-4.9kV、検出部が-3.0kVなどとしている。静電分析器及びMCPに用いる高電圧も負極性であるため、この装置では用いる高圧素子が1種類で済むという利点がある。

2025-11-21

Speaker:
新井雄大

Affiliation:
齋藤研M1

SGEPSS2025発表練習:かぐやMAP-PACE観測データを用いた月表層におけるH2O生成場所依存性解析

月の水がいつ、どのようにして月面に供給・生成されたかを理解することは、月の形成と進化の歴史を解明する上で重要な情報となる。先行する複数のミッションにより、月面に水が存在することが示唆されている。Chandrayaan-1搭載のM3による赤外分光観測によって、極域の永久影での水氷の存在が示唆されている他、成層圏赤外線天文台SOFIAによる観測では水分子特有の6.1μm輝線スペクトルが月の高緯度の表層で検出されている。これらの観測によって月の永久影における水の存在可能性が高まっている。月の水の起源の一つとして、太陽風中のプロトンと表層鉱物中の酸素原子の化学反応が考えられている。プロトン照射を受けた表層鉱物がOH基を形成し、さらにプロトンが照射されることによりH2Oが生成される。本研究では、月周回衛星「かぐや」に搭載されたプラズマ粒子観測装置MAP-PACEの観測データを用いて、月面上空におけるH2Oイオンの検出量を直接比較し、それらをバックトレースすることにより生成位置を特定することを試みる。これにより、月表層での水生成における場所依存性について考察する。本発表では現段階での進捗を発表する。

2025-11-14

Speaker:
鈴木亮

Affiliation:
東京大学 今田研M2

CME衝撃波に対する太陽の双極子磁場の影響

太陽フレアは、太陽活動の中で最大規模のエネルギー解放現象であり、地球周辺の宇宙環境に大きな影響を及ぼす。
太陽フレアにともなって、しばしば大量のコロナプラズマが惑星間空間に放出されることが知られている。
この現象はコロナ質量放出(CME)と呼ばれる。特に、高速のCMEはその伝播速度と背景太陽風の速度との差が音速を超え、前面に衝撃波が形成されることが知られている。
CMEに伴う衝撃波は、惑星間空間における粒子加速の主要なメカニズムであるとされ、宇宙天気現象の根源的な要因として注目されている。
しかし、CMEに伴い形成される衝撃波の物理的特徴、特に発生する衝撃波強度の強弱や衝撃波の伝播が、ダイポール成分や太陽風といった太陽の大局的磁場構造や周囲のプラズマ環境に伴いどのように変化するのかについては、詳細な理解が十分には進んでいない。

そこで本研究では、太陽の大域的磁場強度(ダイポール成分)が変わるにつれてCME伝播の様子がどのように変化するかをMHDシミュレーション(Shiota et al. 2010)を用いて調査した。加えて、それぞれの場合について先行研究(Manchester et al.(2004))を参考に背景太陽風を構成し、背景太陽風のある場合とない場合も比較した。
具体的には太陽の大局的磁場構造がどのような場合CMEに伴うMHD衝撃波が形成されるか、さらにはその衝撃波の性質を決めるパラメータ(マッハ数、衝撃波角、プラズマベータ)がどのように変化するかを確かめた。

2025-11-14

Speaker:
御任勇成

Affiliation:
東京大学 吉岡研M2

Comet Interceptor Mission搭載の彗星水素コロナ撮像装置の光学性能評価
Optical performance evaluation of the Comet Hydrogen Imager onboard the Comet Interceptor Mission

Hydrogen Imager: HIは、遠紫外線(波長121.6nmのLyman-alpha)撮像望遠鏡であり、初めて長周期彗星のその場観測に挑む「Comet Interceptor」ミッションに搭載される。

このスペクトル領域では、共鳴散乱によりLy-αを放つ水素原子を観測できる。水素の空間分布を撮像することで、HIは対象彗星の特徴(例:水生成率)を明らかにすると期待されている(c.f., Combi et al., 2019)。対象彗星を理解する上で特徴そのものが重要であるのはもちろん、データ解釈に影響を与える物理現象も同様に重要である。私が特に注目している現象は「多重散乱」である。この現象は輝度と柱密度の比例関係を変えてしまう(Suzuki et al., 2025)が、その影響は現在も研究中である。HIの観測データが将来的にこの問題への知見を与えることも期待している。一方、HIは現在プロト・フライト・モデル(PFM)の段階にあり、観測後のデータ解析のためには、打ち上げ前の機器性能評価が極めて重要である。

本研究では、HIの光学性能を実験的に測定し、観測の実現可能性を評価した。HIの設計時には、仕様決定のために過去の観測が考慮されたが、多重散乱効果などの観測的背景は限定的である。そこで、実現可能性評価をより有意義にするため、ハッブル宇宙望遠鏡のSTISで観測されたC/2001 Q4 (NEAT彗星)の過去観測データを解析した。多重散乱の影響を評価可能な「高空間分解能」かつ「高スペクトル分解能」のデータは他の装置では取得できないという点で、本データは貴重である。本発表では酸素発光線(130.4 nm)の情報も提示し、Comet InterceptorにおけるHIの状況と比較する。

結果として、HSTデータから多重散乱の効果が示唆され、その解析結果と実験結果からHIの光学性能が科学的目標を達成可能であることを明らかにした。

Hydrogen Imager: HI is a far-ultraviolet (Lyman-alpha; 121.6 nm) imaging telescope installed on the "Comet Interceptor" mission which will make the first in-situ observation of a long period comet.
In that spectral range, we can observe Hydrogen atoms which emit Ly-α by resonance scattering. Through imaging the spatial distribution of H, HI is expected to reveal the target's characteristics such as water production rate. (c.f., Combi et al., 2019) Characteristics themselves are also important to understand the target comet, and physics affecting interpretation of data is also important as well. What I am especially focused on is "multiple scattering". This phenomenon changes the proportional relation between brightness and column density (Suzuki et al., 2025), but its effect is still being studied. I also expect that data from HI can give insight to this problem. On the other hand, HI is now on a step of a Proto Flight Model: PFM, and, to analyze data after observations, it is very important to evaluate the performance of instruments before launch.
In this study, I experimentally measured the optical performance of HI and evaluated its feasibility. When HI was designed, past observations were considered to decide the specifications, but observational background such as multiple scattering effects was limited. To make the feasibility evaluation more meaningful, I analyzed the past observational data; C/2001 Q4 (NEAT) comet observed by Hubble space telescope/ STIS. This data is valuable because no other instruments can achieve such high spatial and spectral resolutions that give insight to multiple scattering. In this presentation, I also give information on Oxygen emission lines and compare them with the situation in the Comet Interceptor mission. As a result, it is revealed that an implication of multiple scattering effects can be seen in the HST data and that the optical performance of HI can achieve its scientific goals.

2025-11-07

Speaker:
本多龍一朗

Affiliation:
東京大学 天野研M2

地球バウショックにおける静電ポテンシャルと電子の熱的・非熱的なエネルギー分配に関する観測的研究

無衝突プラズマにおいて、衝撃波によって散逸するエネルギーが、イオンと電子、およびそれらの熱的成分・非熱的成分(の粒子)にどのように分配されるかという問題は、流体理論では予測できず、根本的な未解決問題となっています。地球のバウショックで観測される電子の分布関数は、多くの場合、熱的なコア(中心部)と非熱的なべき乗則のテイル(裾野)を示しますが、これは宇宙物理学的な衝撃波で普遍的に見られる特徴です。本研究では、MMS(Magnetospheric Multiscale)衛星のデータを用いて、このエネルギー分配について調査します。我々は、一般化されたオームの法則からデホフマン・テラー(HT)座標系における静電衝撃波ポテンシャルを計算し、電子へのエネルギー伝達を定量化します。さらに、熱的成分と非熱的成分を繋ぐ電子分布関数の「ショルダー」(肩)構造を解析し、この構造と衝撃波ポテンシャルとの関係を議論することで、粒子のエネルギー獲得(加速)メカニズムの理解を目指します。

2025-11-07

Speaker:
長田知大

Affiliation:
東京大学 関研M2

固有磁場強度の変化が磁気嵐に与える影響の研究

地球の固有磁場は長期的に向きと強度を変化させており、過去150年間でその強度は約9%減少している。この磁場減少が地球近傍の宇宙環境に与える影響は多く研究されてきたが、磁気嵐の発達への影響は十分に理解されていない。本研究では、磁気圏電離圏結合モデル(GEMSIS-RC+GEMSIS-POT)を用いて、磁気嵐・リングカレントおよびULF波動の発達を調査した。(1) 現在の地球、(2) 2/3の固有磁場強度で、電離圏電気伝導度を対応させて変化させるケース、(3) 2/3の固有磁場強度で、電離圏電導度を現在の地球と揃えるケースの3ケースでシミュレーションを行った。Dessler-Parker-Sckopke関係式に基づいたSYM-H指数を用いて磁気嵐の発達を評価した結果、磁気嵐の激しさはCase 3 > Case 2 > Case 1の順となり、弱磁場下では磁気嵐が速く激しく発達することが分かった。リングカレントのエネルギーの総量は、対流電場の強さ(電離圏電気伝導度)に強く依存しており、Case2では電離圏電気伝導度が高く、対流電場が弱いので、リングカレントのエネルギーは他のケースと比べ小さくなったが、固有磁場が弱いのでSYM-H指数は小さくなったことが考察される。さらに、すべてのケースでリングカレントの発達に伴うULF波動(昼側Pc5、朝側Pc4)が励起され、領域ごとに異なる依存性が示された。

2025-10-31

Speaker:
平岡勇人

Affiliation:
東京大学 今田研M2

CME(コロナ質量放出)に伴う減光域プラズマ流による質量損失

太陽フレアに伴うコロナ質量放出(CME)は太陽地球環境に多大な影響を与え、磁気嵐等を引き起こし、人間社会にもさまざまな影響を与える。CMEによって放出される質量は、フレア・CMEの本体だけでなく周辺のコロナ領域からも供給される可能性が議論されている。それら周辺のコロナ領域は観測的には減光領域(dimming region)と知られており、EUV波長域で上昇流が数時間にわたって観測されたことから、減光領域放出流(dimming flow)として継続的に質量を供給し続けていると考えられている。Jin et al. (2009)では、Hinode/EISでの2006年12月14日X1.5フレアの観測結果を用いてdimming flowによる質量供給量を推定しており、LASCOによるCME本体の質量推定値の約10倍であることからCMEによる放出質量を過小評価している可能性が示された。

CMEによる放出質量が従来より1桁上回り得るのか定量的に評価すべく、本研究ではCMEにおけるdimming flowの質量寄与について推定した。SDO/AIAによる極端紫外線観測データを用いて、K.Dissauer et al. (2018)で用いられた手法をもとにdimming regionを検知した。加えて観測データから密度を推定し、速度を仮定することでdimming flowによる継続的な質量供給量を算出した。結果として、dimming flow の寄与を考慮するとCME放出質量の推定値は約2倍程度になる可能性が示された。スペクトル解析によりdimming flowの速度を再検証し、物理的な描像を議論する。

2025-10-31

Speaker:
戸頃響吾

Affiliation:
東京大学 今田研M2

数値シミュレーション及び観測を用いた太陽風速度の新たな特徴量

太陽風は宇宙天気およびその予報における主要な要素の一つである。数値的予報モデルでは、計算コストを軽減するために経験則を用いて太陽風パラメータを与えることが広く行われている。その中でも太陽風速度は特に重要なパラメータであり、Wang–Sheeleyモデル(Wang & Sheeley 1990; Arge & Pizzo 2000)は広く知られた古典的な経験則である。この経験則では、コロナ底部からsource surface(r = 2.5 R⊙)までの磁力線束管の断面積の拡大率を表すasymptotic expansion factorを特徴量として用いている。このモデルは磁束管が単調に膨張するコロナホールに対しては有効であるが、スードストリーマーと呼ばれるexpansion factorが途中でピークを持つ領域では太陽風速度を過大評価する傾向が指摘されている(Wang et al. 2012; Riley et al. 2012, 2015)。また他の観測研究では、expansion factorの大きさよりも膨張する高さ(expansion height)が重要であることが示唆されている(Dakeyo et al. 2024)。これらの知見は、source surfaceよりも低高度における磁束管形状が太陽風速度の決定に重要な役割を果たすことを示している。

本研究では、コロナ基底からsource surfaceに至るまでの磁束管形状が太陽風に与える影響を、物理的モデルの観点から包括的に評価した。その結果、低高度領域における磁束管形状の変化によって、太陽風速度は数百 km s⁻¹ 程度変化した。また実際の宇宙天気予報に利用可能な観測パラメータについても検討したところ、低高度での膨張に関する情報を反映する特徴量が強い相関を示した。これは密度やエネルギー変換過程の差異によるものと考えられる。

2025-10-24

Speaker:
柳澤球大朗

Affiliation:
東京大学 関研M2

ISS-CALET観測による相対論的電子降下イベントに関連するオーロラ発光高度の同定

国際宇宙ステーション(ISS)搭載のCALorimetric Electron Telescope(CALET)およびMonitor of All-sky X-ray Image(MAXI)によって観測されたMeVを超える電子エネルギー範囲の相対論的電子降下(REP)イベントと、同時にカナダ・アサバスカの二地点に設置された全天カメラによるオーロラ観測結果を報告する。2025年5月3日のイベントではISSの磁気的なフットプリント付近に斑状の拡散オーロラが伴っていたことを発見した。二つの独立した立体視法を用いて、オーロラ発光高度を約90kmと推定した。これは典型的には数10keVの電子降下が原因である。このような数10keVからMeVまでの広帯域電子降下は、コーラス駆動型REP事象の仮説と一致する。宇宙と地上の同時観測の組み合わせは、REP事象に関連する波動粒子相互作用の空間的背景の理解を深めることに寄与する。

2025-10-24

Speaker:
亀井りま

Affiliation:
東京大学 関研M2

MAVEN観測に基づくCIRイベント時の火星からのイオン散逸に関する統計的研究

惑星大気の進化プロセスを解明するためには、大気散逸を理解する必要がある。特に、グローバルな固有磁場を持たない火星では、太陽風と上層大気との相互作用が大気中のイオンの散逸に与える影響が注目される。先行研究では、宇宙天気イベントが火星誘導磁気圏の擾乱を引き起こす可能性が示唆されている一方で、宇宙天気イベントに伴うイオン散逸が火星の大気進化に与える影響については統一的な見解が得られていない。そこで、本研究では、宇宙天気イベントが火星イオン散逸に与える影響を明らかにすることを目的として、火星周回衛星 MAVEN の観測データの統計解析を行った。代表的な宇宙天気イベントである、高速太陽風が低速太陽風を追い越す際に発生する相互作用領域(CIR)に着目し、2015 年から 2023年までの MAVEN の観測データを用いて、131 件のCIR を同定した。本発表では、平均的な太陽風条件下とCIR到来時におけるO2+およびO+イオンの密度・速度・フラックスの空間分布を比較し、その変化について考察する。

2025-10-17

Speaker:
陶由未加

Affiliation:
東京大学 笠原研M2

あらせのデータを用いた宇宙空間での帯電メカニズムの解析

衛星帯電は人工衛星の故障を引き起こす要因の一つであり、衛星を安全に運用するためには、その発生条件を明らかにすることが重要である。衛星帯電は、衛星に流入・流出する荷電粒子のバランスによって決まる。これまでの研究により、衛星周囲の電子温度やフラックスとの関連が示唆されている。また、日陰時には太陽光による光電子放出がなくなるため、衛星は負に帯電しやすいことが知られている。本研究では、日陰時における衛星帯電の発生条件を検討するため、正味のフラックスを計算した。その結果、二次電子放出係数が1を上回る低エネルギー帯(2~3 keV以下)の電子フラックスと、1を下回る高エネルギー電子フラックスとの釣り合いが正味のフラックスに大きく寄与することが示唆された。さらに、イオンについても解析を進めたところイオンも無視できないイベントが存在し、電子フラックスとの比較において正味の電子フラックスとイオンのそれとが同程度となるケースが確認された。これらの結果から、衛星帯電の発生には電子だけでなくイオンも重要な役割を果たす可能性が示された。

2025-10-17

Speaker:
上井戸一紀

Affiliation:
東京大学 天野研M2

分厚い相対論的速度シアでの運動論的不安定

相対論的ジェットではその側面から強い放射が観測されている。しかし、ジェットの運動エネルギーがどのような機構によってシンクロトロン放射に必要な磁場や高エネルギー粒子へと変換されているかは明らかでない。近年提案された Alves 不安定は運動論的なシア不安定であり、Kelvin-Helmholtz 不安定とは異なり相対論的速度シアで大きな成長率を示すことからジェットでのエネルギー変換機構として注目されている。本研究ではプラズマ粒子シミュレーション(PIC)を用いて速度シアの厚みがプラズマ慣性長より十分大きい場合にも Alves 不安定が成長するかを検証した。その結果、シアの厚みによらずシア内部では慣性長スケールの磁場を作る Weibel 不安定が発達し、やがてシアに垂直な shock-like な構造が形成されることがわかった。これにより、運動論スケールの物理過程がジェットの大局構造に影響を及ぼすことが示唆される。

2025-10-10

Speaker:
西岡知輝

Affiliation:
東京大学 関研D3

Study of Ion Escape from Terrestrial Exoplanets: Effects of Hot Oxygen Corona and Stellar Activity

金星や火星のような非磁化惑星では、外気圏に広がる酸素コロナや熱圏の酸素原子がイオン散逸の供給源となる。このメカニズムは現在の金星で支配的な大気散逸プロセスであり、金星型惑星の大気進化を理解するうえで、酸素コロナがイオン散逸にどの程度寄与するかを明らかにすることが重要である。

近年、M型星のハビタブルゾーン内にある系外惑星が多数発見されている。M型星は太陽型星に比べ恒星活動が活発で恒星フレアが頻発するため、極端紫外線(XUV)放射が強く変動することが知られている。本発表では、フレアが熱圏構造や非熱的酸素分布、さらにイオン散逸に及ぼす影響について紹介する

2025-10-03

Speaker:
川島 桜也

Affiliation:
太陽系科学研究系PD

Chemical Imaging with a Spaceflight LDMS Instrument for Planetary Exploration

本発表では,将来の惑星探査に向けてUniversity of MarylandおよびNASA GSFCで開発されている,CORALSと呼ばれる装置の性能評価試験について紹介する.
CORALSはレーザー脱離イオン化法を採用した質量分析器(LDMS)であり,LDMSはMOMAやDraMSに代表されるように,次世代の惑星探査用装置のトレンドの一つである.装置は基本的に,固体サンプルにレーザーのパルスを照射することで発生したイオンを加速し,質量分析器に通じて分析する,というシンプルな構成になっている.LDMSは試料の前処理が不要である簡便さや,有機物・無機物ともに分析できる汎用性など,惑星探査にとって適した要素をいくつか持っている.
CORALSを際立たせるのは,固体試料表面のイメージングが可能な点と,Orbitrap質量分離部を用いた高分解能質量分析が可能な点である.今回,いくつかの不均質な表面を持つサンプルで性能実証試験を行ったので,その内容と将来惑星探査における応用可能性について紹介する.

2004〜2025© 宇宙プラズマグループ/宇宙科学研究所( ISAS)

国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)

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