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2025/07-2025/09

2025-09-26

Speaker:
米田匡宏

Affiliation:
京都大学大学院理学研究科地球惑星科学專攻地球物理学教室
太陽惑星系電磁気学講座 D2

S-310-46号機による電離圏中性大気観測

電離圏における中性大気は、プラズマの運動に衝突を介して影響する。中でも電離圏の中性大気密度と組成は衝突頻度に関連するため[Kelly, 2009]、プラズマの運動、ひいては電離圏電気伝導度を算出する際に必要となっている。これらの直接観測は、1980年代頃まで飛翔体に中性質量分析器を搭載することにより行われていたが、測定の複雑さや経験モデルの発達もあり、現在ではほとんど行われていない。しかし、近年では地球低軌道の利用が発達してきたことにより、環境測定として観測の重要性が増してきている。また、経験モデルの改良という観点でも新たな観測が望まれている状況である[Emmert+, 2021]。そこで、我々は中性大気密度・組成の新たな観測を促進するため、電離圏観測用中性質量分析器の開発を行った。開発は電離圏観測ロケットS-310-46号機への搭載を念頭に行われた。
本装置は月極域レゴリス中の水を探査するために開発されていた中性質量分析器TRITONを基としており、飛行時間質量分析法を採用している。飛行経路を三回反射させることで、大きさを抑えながら質量分解能を向上させることを可能となっている。S-310観測ロケットへの搭載に向けては新たに質量分析部の小型化、および大気取込口である前室部の設計を実施した。地上試験では質量分解能200を達成しており、電離圏における主要な粒子種を分解するに足る性能を有することが確認された。また、電圧印加タイミングを調整することにより、特定の質量への感度を下げることが可能であることも確認された。
電子回路部との噛み合わせ、較正試験を実施した後、本装置は"Neutral Mass Spectrometer"(以下、NMS)として電離圏観測ロケットS-310-46号機へ搭載され、2025年7月15日に打ち上げられた。当初の予定通り、打ち上げ 108 秒後にイオン源が、157 秒後に各種高圧が起動された。その後、高圧の昇圧が完了した 180 秒後から、放電が生じた228秒後まで、約48秒間測定が実施された。各種高圧のうち、イオンを加速させるパルス高圧のモニター値が設定値に対して約60V高くなっていることが確認されたが、他のモニター値は正常な値を示していた。結果、質量分解能は約120と地上試験時と比較して低下しているものの、イオン源内の中性大気が成分毎に分離されたと思われる質量スペクトルが得られた。また、一部の成分のカウントレートには十数秒程度の周期的な変動が確認されている。今後は、ロケット姿勢データを用いて定量的な評価を行う予定である。

2025-09-19

Speaker:
式守隆人

Affiliation:
篠原研M2

修論中間発表練習:あらせ衛星観測による高周波EMICの統計解析

HFEMIC波は、高周波で狭帯域(Δf ≲ 0.1fcp、f < fcp)の電磁イオンサイクロトロン(EMIC)波である。事例研究および統計研究(Teng et al., 2019; Asamura et al., 2021; Min & Ma, 2024)により、HFEMIC波は温度異方性(T⊥ > T∥)のある低エネルギー(≲100 eV)プロトンによって駆動される可能性が高いことが示されている。特に(Asamura et al., 2021)では、あらせ衛星によって取得されたHFEMIC波と低エネルギープロトンフラックス増加の同時観測データを解析し、波動・粒子相互作用解析手法を用いて、HFEMIC波と相互作用するプロトンが実際にエネルギーを失い、そのエネルギーが波の励起に使われていることを明らかにした。低エネルギーの温度異方性(T⊥ > T∥)のあるプロトンは内側磁気圏に広く存在することが報告されており(Wu et al., 2022)、HFEMIC波の自由エネルギー源であると考えられている。しかし、Van Allen Probesの観測データを用いた(Teng et al., 2019)の統計研究では、HFEMIC波の出現がMLTについては主に朝側から昼側に限られており、夜側では報告されていない。
このような背景のもと、本研究では、最終的にはHFEMICの励起プロセスがAsamura et al. (2021) で示されたようなものが一般的であるかどうかを確認するために、あらせ衛星データを用いてHFEMIC波イベントを新たに抽出し、再度統計研究を試みた。抽出には磁場に対する伝搬方向や偏波特性を考慮した。解析の結果、Van Allen Probesでは確認されなかった夜側領域においてもHFEMIC波の存在が明らかとなった。

本発表では、この発見を踏まえ、夜側領域にHFEMIC波の出現に関係する要因として、励起源としての低エネルギープロトンの温度異方性、背景電子密度、fpe/fcp 比、地磁気活動度の影響について議論する。また、あらせ衛星を用いたEMIC波の統計研究(Jun et al., 2023)とも比較を行い、HFEMIC波に関する理解をさらに深める。

2025-09-12

Speaker:
小池春人

Affiliation:
京都大学大学院理学研究科地球惑星科学專攻地球物理学教室

太陽惑星系電磁気学講座 PD

高緯度磁気圏境界における電離圏起源O+イオンの加速

カスプ領域は磁気圏への電離圏イオン供給の主要な源の一つである。カスプの電離圏高度で加熱されたイオンは、磁力線に沿って上昇し、磁気圏対流によって夜側へ輸送される。この過程で比較的エネルギーの高いイオンのみがカスプ高高度に到達し、その一部は開いた磁力線に沿って惑星間空間へ流出する。これまで、カスプから磁気圏外へ流出するイオンの流出率などの統計的な性質については多く調べられてきたが、そのようなイオンが磁気圏境界を通過する際のダイナミクスは十分に理解されていない。

本発表では、Cluster 衛星により観測された高緯度磁気圏境界付近でのO+イオンの加速イベントを報告する。本イベントでは、電離圏から上昇してきた約1 keVのO+イオンが、磁気圏境界通過時に20 keVを超えるエネルギーへと急激に加速されている様子が確認された。O+イオンのエネルギーと速度分布の解析から、この加速はローブリコネクションのアウトフロージェットとマグネトシースのプラズマ流によるピックアップの結果生じていることが明らかになった。これらの結果は、高緯度磁気圏境界における電離圏起源のO+イオンの非断熱的な加速機構の存在を示す新たな知見である。

2025-09-05

Speaker:
山崎敦

Affiliation:
太陽系科学研究系

紫外線観測を支えてきた技術

これまで地球・惑星の超高層大気~電離圏・プラズマ圏の紫外線撮像観測を試みてきました。
紫外線撮像観測のサイエンス目的の変遷とそれをそれを支えてきた観測技術をまとめてみました。
紫外線観測の現在・過去・未来の継続的に発展してきた観測技術を紹介します。

2025-07-25

Speaker:
内藤由浩

Affiliation:
総研大D2

Penetrating waves along spicules to the corona

Alfvénic waves, observed as the transverse motion of spicules (jets extending along magnetic field lines) in the chromosphere, are among the most promising candidates for heating the solar corona and accelerating the solar wind in polar coronal holes.  Here, we conducted a statistical study of Alfvénic waves along spicules in polar coronal holes using Si IV spectra observed by the Interface Region Imaging Spectrograph (IRIS) to determine whether sufficient wave energy can penetrate into the corona, even considering wave reflection at the transition region. We developed a technique for wave detection, wave-mode identification, and energy flux estimation for each detected wave using the line-of-sight (LOS) velocity and intensity. 120 waves were detected, including 65 ascending Alfvénic waves, 43 descending Alfvénic waves, 6 ascending slow-mode waves, and 6 descending slow-mode waves. Taking into account the random orientation of transverse motions relative to the LOS direction, the average energy fluxes of ascending and descending Alfvénic waves were estimated to be 2.1 × 105 erg cm^−2 s^−1 and 1.1 × 105 erg cm^−2 s^−1, respectively. Assuming that a fraction of ascending Alfvénic waves are reflected at the transition region and then observed as descending Alfvénic waves, the energy flux penetrating into the corona is 1.0 × 105 erg cm^−2 s^−1. We also identified multiple velocity components in the observed spectra, suggesting that the energy flux may be underestimated by a factor of 4 to 9. This study presents the first observational estimates of the energy flux of Alfvénic waves that penetrate into the corona. Our results demonstrate that Alfvénic waves carry sufficient energy for the coronal heating and the solar wind acceleration, even considering the wave reflection at the transition region.

2025-07-18

Speaker:
山崎大輝

Affiliation:
太陽系科学研究系

太陽大気の3次元磁気流体平衡磁場外挿手法の開発

太陽大気中では、電離ガスが磁場と相互作用し多様な磁気流体現象が観測される。特に、太陽フレアとそれに伴うコロナ質量放出は惑星間空間の磁気的な環境に大きな影響を与える。これらの磁気流体現象を理解するためには、太陽大気中の3次元磁場構造を把握することが重要である。直接観測から3次元磁場を決定することは困難なため、これまでの研究では、観測可能な太陽表面の磁場を境界条件として、数値的に3次元磁場を外挿する手法が用いられてきた。しかし、これまでの手法は太陽大気中でのローレンツ力の釣り合いのみを仮定した力学平衡解によるモデリングであり、ガス圧の寄与が大きい弱磁場領域や低層大気中の磁場がよく再現されない課題があった。そこで、本研究では、磁気圧だけでなくガス圧の寄与も考慮した、3次元磁気流体平衡場外挿コードを開発した。実際にコロナ質量放出を伴う太陽フレアを発生させた黒点群の観測磁場を境界条件として適用し、3次元磁場を外挿した。外挿された3次元磁場について、これまでの手法と残差力の比較を行った結果、残差力が約4%低減され、より力学平衡に近い解を与えることを確認した。本発表では、得られた3次元磁場構造の比較とガス圧分布についても議論する。

2025-07-11

Speaker:
小笠原桂一

Affiliation:
South West Research Institute, USA

Heliospheric current sheet observed by Solar Orbiter Heavy Ion Sensor / Interstellar Mapping and Acceleration Probe

ソーラーオービターのカレントシート通過のイベント(0.3-1 AU)を、太陽風中の重イオンの観測を軸に紹介し、太陽近傍の活動領域との対応について議論します。後半時間があれば、今年9月に打ち上げ予定のIMAPミッションについて科学目標や観測機器などをレビューします。

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